ライター・カメラマン・イラストレーター・デザイナーでは食えないよね

「私が若い頃は……」と語り始めるのは老化の証拠。
それを認めたうえで、私が若かった頃を振り返ると、編集の現場は今と大きく異なりました。

およそ25年前。
ワープロが普及し始めていたものの、手書き原稿を編集部に郵送するライターは少なくありませんでした。
原稿が打ち込まれたフロッピーディスクも、編集部まで郵送されてきました。

編集部には、部員全員分のワープロは用意されていません。
順番にワープロを使って、原稿データを整理したり、手書き原稿をデータ化したりしていました。

編集部にあるレイアウト用紙に、編集者は鉛筆で線を引きながら写真・イラストスペースや文字スペースを指定します。

イラストスペース(天地・左右)を決めたら、イラストレーターに電話をしてイラストを発注。
出来上がったイラストは郵送されてくるのですが、たいていギリギリなので編集者が受け取りに行くことが多かったように思います。

活版にない文字は写植で作成するので、写植屋さんに発注。

イラストは編集者から製版屋さんに渡し、写植は製版屋さんが写植屋さんに取りに行っていました。

まだまだ工程はあるのですが、どうやって雑誌を作っていたかが本題ではないのでここまでにしましょう。

それが今では。
ライターはパソコンで原稿を作り、データをメールで編集部に送ります。
写真もイラストも、データで送られてきます。
パソコンでさまざまな書体が使えるので、写植屋さんに発注することはもうありません。
イラスト・写真・写植を製版する過程がなくなったため、製版屋さんとも仕事をしなくなりました。

つまりは、技術の発展で簡単に雑誌が作れるようになり、消えていった仕事があるわけです。

将来は、飯を食う仕事としてのライター・カメラマン・イラストレーター・デザイナーは成立しなくなるでしょう。
専用ソフトが流通し、簡単になった分だけ、誰でもこうした仕事ができるようになり、すでに単価が下がっています。
名の売れた一握りの人以外、仕事の価値が下がっているわけです。

そのせいか、新しい稼ぎ方が生まれました。
最近、テレビでも学校でも企業でも省庁でも、Mさんのイラストばかりが使われています。
私もMさんのイラストをブログで使っています。
理由は、商用でもフリーでイラストデータを提供してくれるからです。
たいていの場合、イラストも写真も権利がうるさく、トラブルになることは珍しくありません。
ですからMさんのイラストは安心して使えるのです。
結果として、Mさんのイラストばかりが世の中に出回るようになりました。

Mさんについては、利用者が彼のページを訪れることでアクセス数が増えて、広告収入が得られます。
イラストをタダにしても、稼げるというわけ。
IT技術が進んだことで、ビジネスモデルも変化しています。
もちろん、Mさんをマネする人がたくさん出てきたら、この稼ぎ方は成立しなくなるでしょう。

自分が仕事をしてきたおよそ25年を振り返って思うのです。
データ化できる仕事は価格破壊が起こる。
だから、副業・趣味程度にしたほうがいいと。

私は文章の書き方を教えていますが、相手は別の職業を持っています。
もしも「ライティングで食べていきたい」と相手が話せば、どれだけ困難かを時間をかけて説明します。
子どもたちがそんなことを口走ったら、全力で止めます。

ライターだけでなく、カメラマンもイラストレーターもデザイナーも然り。
自己表現が絡む仕事については、ますます先細りだと私は考えています。
誰かの作品を見るよりも、自分の作品を見てもらいたい、認めてもらいたいという承認欲求が強まってきているからです。
インスタグラムが人気なのは、その表れでしょう。

多くの人の承認欲求をうまく満たしてあげる仕事には、将来性があるでしょうね。
ただし、香川大学元教授の岩月謙司氏(詳しくはこちら)のようなセクハラ方向に進まないように、さらには詐欺まがいの自己啓発にならないようにする注意が必要。

または、承認欲求とは異次元の仕事は、社会生活を支えるために大切です。
電気、水道、ガス、ゴミ収集などライフラインにかかわる仕事、機器類の部品を作る仕事がその代表です。

現在、私は「フリー編集者・ライター」「医療・教育ジャーナリスト」などと名乗っています。
近いうちに肩書きだけでなく稼ぎも「フリー」になると見越しているので、少しずつ別の仕事に移っていこうと考えているところです。
Mさんのイラストですね




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