「漢方の大嘘」に悪意を感じるのはなぜだろう?

漢方薬が煎じ薬だけだったら、漢方薬の恩恵を受けられなかった患者や消費者が多かったのではないでしょうか。

私は煎じ薬を使った時期があったものの、長続きしませんでした。
編集者として働いていた当時は、毎日30分かけて薬を煎じる心の余裕がなかったのです。

消費者の立場では、エキス剤で手軽に安く漢方薬を利用できて、非常に助かっています。
私の場合、西洋医学の合成医薬品ではのどの痛みやセキが止まりにくいのですが、漢方薬だと実によく効くからです。
発熱でひどい悪寒がするときには、葛根湯でずいぶん楽になりました。
エキス剤は漢方薬としては不完全で「正しい」ものではないのかもしれませんが、私のような人にはとても役に立っているのではないでしょうか。

薬の選択肢が増えることで、患者や消費者にも大きなメリットがあったと私は考えます。
メーカーの営業努力だけでエキス剤が普及したわけではなく、患者と消費者のニーズにも合致していたはずです。

ある週刊誌には、エキス剤のメーカーの問題点がいくつか掲載されていました。
エキス剤のメーカーが医師を対象に全国で積極的に勉強会を開いたり、組織づくりに尽力したりしたことは、収益を上げることが目的だった。つまり、勉強会はエキス剤のメーカーの商品の宣伝である……

「あくどい」みたいな書かれ方でしたが、企業努力として当然のことではないかと、私は思うのです。
自社の商品を売るためにPR活動を行うのはとても自然なことで、自社製品の長所を列挙することも企業として珍しくありません。

ただ、週刊誌が取り上げていたエキス剤のメーカーについてインターネットで調べたところ、三代目のワンマン社長が美術品や不動産などの多角経営に失敗したほか、株価操作、病院関係者へのリベートなど数々の不祥事を起こし、特別背任罪で逮捕・起訴されて有罪判決を受けています。
そして社長が交代した後、エキス剤に事業を特化させて、積極的に営業活動を行ってきたようです。

現在は創業一族ではない人が社長のようですが、企業体質とは一般的になかなか変わらないものです。
もしかしたら風通しの悪い、トップダウン型の保守的な会社なのかもしれません。
不祥事などで倒産寸前の会社を立て直すために、上からの指示で営業担当者たちは一丸となって、営業活動に駆り立てられていたと推測されます。

週刊誌によれば、エキス剤のメーカーはエキス剤を分類して、漢方をよく知らない医師にも使えるように適応症を整理したと書かれています。
その結果として、医師は漢方薬の使い方を漢方の専門書や専門家から学ばずに、患者に処方するようになったそうです。
また、勉強会や講習会での講師も、肩書きはよいが、漢方の知識はエキス剤のメーカーから仕入れた程度の人物だったとのこと。

漢方薬で重篤な副作用が現れるようになった一因が、漢方の知識を持たない医師が薬を処方することについては、私も同意しました。

ただ、週刊誌の記事への疑問はまだまだあります。
エキス剤のメーカーが大学に寄付をしていたことを、あたかも暗部であるかのように週刊誌では取り上げていたのですが、製薬メーカーや食品メーカー、医科用製品メーカーなどの寄付によって大学に「寄付講座」が設けられるのはよくあること。

エキス剤のメーカーだけではなく、日本の多くの企業が行っている営業活動や企業努力を、あたかもその一社だけの事例のように週刊誌が取り上げていると私は感じてしまいました。
やはり、ガリバー企業であるエキス剤のメーカーのあり方への不満・反感その他が複雑に絡んでいるのでしょうか。

エキス剤の一消費者である私個人の見解ですが、同じ名前の漢方薬でもメーカーで効き方が違います。
同じ材料の草でも生える場所が違えば、含有成分も多少は変わるということでしょうか。

そして、エキス剤と内服液でも、効き方は大きく異なりました。
内服液のほうが鋭く効くのです。
私の元同僚も、同じことを話していました。

漢方薬をカレーにたとえれば、煎じ薬はスパイスを調合して作るカレー、エキス剤はレトルトカレーに当たるのではないでしょうか。
レトルトカレーの中身は自分で調整できないけれど、そこそこおいしいし、買い置きができて便利です。
レトルトカレーしか食べていないのに「カレーとは……」なんて語ると笑い種になるので、カレーの奥深さを知るにはスパイスなどの知識が必要になるでしょう。
漢方薬も、時と場合によって煎じ薬とエキス剤、内服液を使い分けたり、製薬会社を選んだり、それぞれの生薬について深く学んだり、柔軟性と広がりがあったほうが消費者としてはありがたいものです。

普段は健康な人が、急に寒気がしたり、のどが腫れたり、空咳が出たり、鼻が詰まったりしたときに、エキス剤を上手に利用すると体がずいぶん楽になります。
夜にぐっすり眠れれば、体調の回復も早くなるでしょう。
季節の変化やストレスなどで体がバランスを崩したときに、漢方薬は元の調和した状態に戻る手助けをするはずです。

今回、週刊誌でたたかれていたメーカーが、医師はもちろん、私たち患者や消費者に向けて、東洋医学の奥深さや西洋医学の考え方との違いを教えてくれる無料セミナーを全国各地で開いてくれることを希望します。
もう一つ、合成医薬品とは違って、漢方薬は原材料を海外からも調達してこなければなりません。
原材料の資源を確保して、今後も安定して漢方薬を私たちに届けてくれるように、企業努力をお願いしたいと思っています。

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