「割り切れない死」本のラインナップ その1

帯津良一医師は、お会いすると思わず両手を合わせて拝みたくなるような風貌の人です。風貌だけでなく、発言や本に書いてある内容も、ありがたいありがたいと感じてしまいます。

帯津医師と作家の五木寛之氏の対談集『生死問答』(平凡社)では、「死にどき」にポックリ逝きたい、そのためにも養生に励む、という一見矛盾するようなことが、ストンと腑に落ちるような言葉で述べられていました。代替療法とは何かと考えたい人にも、この本をお勧めします。
残念なのは、担当編集者が勝手に入れたと思われる「二人の結論」という箇所。これが実につまらない! 官僚の資料ではないですが、この箇所を「のり弁」にして読者にお渡ししたいくらいです。ぜひとも無視してください。

要約したり、結論づけたりするとひどくつまらなくなる話というのは、世の中に多数あります。宮沢賢治の作品がその代表。『生死問答』についても、「で、何?」と結論は急がずに読んでほしいと思います。



老後の預貯金、相続、起業などに関して専門家たちの意見を集めた『老後のお金』(文藝春秋)で、帯津医師はこう語っています。
「自分の力で収入を得ていることも凛として老いるための要因になっているようだ」
年を取ってもなお凛としている人々の共通点が、現役で働き続けているということ。財産のある・なしは関係ないんですね、帯津医師の観点では。

雑誌その他で「老後資金は1500万円」「いやいや5000万円」「持ち家なら3500万円」などと、さまざまな数字が出てきます。金融機関ではシミュレーションもしてくれるようで「投資信託なんてどうでしょう?」というお誘いも多数あります。
不安でお金をため込んだり、計算を何度も繰り返したり、よくわからない金融商品に手を出すよりも、自分の力で収入を得たり、周囲に必要とされる人になるための努力を続けたりしたほうが心身の健康が保たれるかもしれません。

「死ぬまで日銭を稼ぎたい」という私の願いは、帯津医師の影響もあるのでしょう。そんなわけで定年のない自営業の道に入りましたが、試行錯誤の日々……

私事をさておき、『老後のお金』については、各専門家が結論めいたことを書いているものの、その途中の理屈に私は注目してほしいと思います。お金のことを考えるのは、結局、自分はどう生きるか、どう生きたいかを考えること。いつ病気になるか、いつ事故に遭うか、何歳まで生きるかなんて、理屈をこねくり回しても答えが導き出されるはずがありません(神のみぞ知る)。誰かに頼り切ってしまいたい心境でいると、詐欺に遭う確率がぐんと高まるので要注意。


選挙があれば必ずと言っていいほどテレビに登場する池上彰氏。もちろん政治通ではありますが、教養を大変重視している人でもあります。
『池上彰の宗教がわかれば世界が見える』(文藝春秋)はタイトルに難あり! 無宗教と言われている私たち日本人が死を考えるときに、宗教は無視できませんよね、と問いかけてくる内容だからです。国際政治が見えてくる要素もあるが、このタイトルはこじつけだと思います。

日本人は無宗教と言われるが世界にはどんな宗教があるか。
イスラム教・キリスト教・仏教・神道にはどのような価値観と教えがあるか。
それでは私たちにとって宗教とはなんだろうか。
このようなことを宗教学者やお坊さんたちと池上氏が語り合っています。

池上氏と解剖学者の養老孟司氏の対談で、「死に方と生き方は同じなんですよ」という養老氏の発言が印象的でした。


「割り切れない死」ということで、今回紹介した本にはマニュアルや結論がありません。
賢い・正しい・得する・スッキリするという効果は得られませんが、死に方を考えることで自分が何を大事にしているのかを意識できるかもしれません。
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