苦しいときほど視野を広げるために勉強が大事だと、つくづく思います

『サイコパス』の著者である中野信子氏は認知神経科学者だそうです。
認知神経科学って何?

さておき、『サイコパス』はさまざまな本からのの引用が多く、中野氏は治療家ではないので「引用しただけかな」と思われる点も多々ありました。加えて、中野氏はフロイトについても触れていたので、精神科の和田秀樹医師(あまり医師っぽくないのですが)の著書を読んでみました。



当たり前ではありますが、「この治療法が絶対によい」ということはないのですね。
時代の移り変わりで薬の種類が増えたり、患者のタイプも変わったりするわけです。

「おわりに」から引用します。
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 一つは、人間の心をどう見るか、どう考えるか、どう治していくか、などということは、一つの理論で説明のつくものでなく、いろいろな考え方がある、ということです。
 人の心というものは、そんな単純なものでなく、いろいろな見方ができるということです。
 二つめは、そうはいっても、それらの理論は、みんな現在まで生き延びていて、多くの人の心を救ってきたり、改善してきたのですから、どれもがある意味で正しいということです。
 三つめは、だとすれば、自分の心を理解し、ラクにしていくためにも、あるいは人間関係や仕事の動機づけなどのためにも、ある理論が自分に合わなくても、別の理論なら合うかもしれないと考えてみることが大切だということ。ほとんどの人は、自分に合う、自分に役立つ心の理論を見つけられるはずなのです。
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苦しいときほど視野を広げるために勉強し、より多くのことを知るのが大事なのだと思い至りました。
若いころの自分の愚かさが悔やまれます……

以下は本のまとめと、私が調べた治療家の生存期間です。


■心理学の目的
①実験心理学
「パブロフの犬」の研究など、健康な心を扱う
②臨床心理学
病んだ心を扱う

■臨床心理学の歴史
古代
心の病は得体のしれない魔物が原因とされた。

18Cの終わり 
フランツ・メスメル(1734- 1815年)「動物磁気」

19Cの終わり 
ジャン=マルタン・シャルコー(1825-1893年)「催眠術」
患者に暗示を与えたり、葛藤などを吐き出させたりしてヒステリーを治療した。

20C
ジークムント・フロイト(1856- 1939年)「精神分析」
催眠術がうまくなかった(上手ではなかった)ので、別の手段を考えた。それが夢判断や自由連想法。いわゆる「無意識」の発見。
心の病気を探る精神分析は神経症の治療には役立った。
原因があって結果があるのは科学の基本的な考え方だが、原因を探る方法は役に立たなくなってきた。

人間の心を「意識・前意識・無意識」の3つの層に分けた(局所論モデル)。
〇意識 今、意識している心
〇前意識 何かのきっかけで意識の表面に浮かび上がる心→夢
〇無意識 意識の表面に浮かび上がらない心。忘れてしまいたい過去の記憶

精神分析で思い出した過去には、偽りの記憶も含まれている(心的現実論)。
患者の無意識には、意識したくない願望や欲望、言い換えれば性欲などの欲望が押し込められている。

人間の心を3つの層に分ける(構造論モデル)。自我・超自我・エスがそれぞれ葛藤している。相互のバランスが崩れたときに、神経症が起こる。
〇自我 人間的な理性や知能をつかさどる
〇超自我 親から植え付けられた無意識の道徳観や価値観
〇エス 性欲や攻撃性といった動物的な本能

子ども時代(おおむね6歳まで)に心の発達が決まる。

患者が分析家に好き嫌いなどの感情を持つ「転移」。分析家が患者に感情を向ける「逆転移」。逆転移を厳しく禁じた。

20C~現在
アルフレッド・アドラー(1870 - 1937年)
「何のために、そのような異常な行動を起こしたのか」と目的を考える心理療法が主流。

「劣等コンプレックス」「器官劣等性」
身体的に他人より劣っている部分があると劣等感が強くなり、神経症になりやすい。劣等感をばねにして「優れた人間になりたい」という目的が持てれば、自信を持つこともできる。

人間は「無力な状態から脱して優れた存在になりたい」という欲求を持っている。優越性を追い求めるから、劣等感も生まれる。

社会が人間の精神に与える影響を重視する。心の病気は対人関係の病。

人間はindivisualで分割できない存在。
自己認識や世界観の総体が「ライフスタイル」。本人の目的や他者の反応によってライフスタイルは変えられる。

問題行動などの「症状」だけに注目して対応すると、目的が見えなくなる。全体を見て、目的を考える。

1960年代
薬の発達→神経症の症状を和らげる薬が登場→臨床心理学の対象はボーダーライン(精神病と神経症レベルの中間)になる→精神分析が役に立たない

オットー・カーンバーグ(1928年-)
クライン学派の「スプリッティング」
人間の攻撃性は生まれつきの本能。だから自我を鍛え直す。
重症のボーダーライン患者を治療していた。社会的に成功しにくい、貧困層。

ハインツ・コフート(1913-1981年)
「育て直し」「共感」
攻撃的になるのは環境への反応。自己愛が傷つけられたときに生じる。
軽症のボーダーライン患者を治療していた。富裕層。
逆転移をOKにした。

1970~80年代
ベトナム戦争などによってトラウマ論が盛り上がった。

1990年代以降
エリザベス・ロフタス(1944年-)
1997年に、PTSDの治療でトラウマ記憶を思い出した人の自殺企図や自傷行為が増えたと報告。「カタルシス効果」ですっきりするどころか、患者を苦しめた。

変えられるものを変える心理療法がスタンダードになった。
〇認知療法 心の状態を変えるために、ものの考え方や受け止め方を変えていく
〇行動療法 行動を変えることで心の状態を変える
〇認知行動療法 行動によって気づかせる認知療法

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結局は「やるパラ」ということで収まりがつきました
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