勉強をがんばったのに、通信簿での評価が低くて落胆しているかもしれない息子へ

たぶん、君は通信簿を見てがっかりしたと思います。
この1年、担任の先生に励まされながら勉強をがんばったし、得意の理科ではテストで100点を取ることもありました。
勉強にちょっと自信がついてきたという印象を私は受けていました。
「僕、私立中学校を受験しようかな」と言ったときには、オイオイと思いましたが。

それなのに、君が予想したほど通信簿での評価がよくなかったでしょう。
しかも、妹の通信簿での評価は、君よりはるかによかったわけです。
君の様子を見て私は「気にしているな」と思っていました。

どうして学校での成績が伸びないのか、私なりに考えたのは「学校での教えられ方が、君のような子どもには合っていない」ということ。
以前、君は「決められた仕事だけやるほうが楽だ」などと話していました。
君は自分自身のことをわかっていません。
決められたことを、決められたとおりに君はできないのです。
覚えていないかもしれませんが、君が2年生のときに学校の先生からプリントをファイリングするように指示されました。
しかし、君のプリントはぐちゃぐちゃ。
先生は「自分はきちんと伝えたし、ほかの子どもはできているから、この子だけが怠けている」と判断したようですね。
「もう、やらなくていい」と先生によく言われ、君は作業を中断していたのです。

その先生から私もいろいろと言われましたが、私自身、君がファイリングができないことは心配していませんでした。
編集者時代の同僚たちはファイリングどころか、机がカオスという人のほうが多かったからです。
編集者は「決められた仕事だけやる」よりも新しい企画をどんどん出していくほうを求められてました。
ファイリングが全然できなくても企画力があれば「仕事ができる」と自分も周囲も認められるわけです。

ただ、学校ではそのような評価はされません。
また、君のようなタイプを除いた多くの子どもたちに合わせた教育が行われているでしょう。

以上のことから、学校生活で君はがっかりする場面が多いかもしれません。
がんばって勉強しても通信簿の評価は低い。
担任の先生からは怠けていると思われる。
自分のほうが勝っていると思っていた妹よりも成績が悪い。

もしかしたら、勉強なんてできなくても生きていけるなんて開き直っていませんか。
しかし私は、君こそ勉強が必要だと考えています。
理由は、決められたことを、決められたとおりに君はできないからです。
このことを「創造性が優れている」と評価されるか、「処理能力が低い」「仕事ができない」と評価されるかは、職種で大きく異なります。

世の中は、さまざまな仕事で成り立っています。
君の能力が周囲にきちんと評価されて、AIなどに取って代わられず、食っていけるだけの給料が得られる仕事を選び取ってほしいと私は思っています。

ですから、学校での成績はひとまず置いておいて、私は君に作文を教えることにしました。
全教科の成績がそこそこでも、作文ができることで入試や就職試験で有利になり、選べる職種も増えるからです。

そういえば、「作文」と聞いただけで君はとても嫌そうな表情をします。
「お母さんが教える」と言ったら、君は泣いたこともありました。

最初に私が伝えたいのは、君が思っている「作文」は、プロのライターである私でも難しいということです。
君はいきなり文章を書き始めますが、私の感覚では「ジャンプして2階の部屋に上ろうとしている」行動です。
忍者かオリンピックの体操選手の脚力がなければ、高くジャンプできません。
地面でぴょんぴょんと飛び跳ねるよりも、一般人である私たちは階段を使って2階まで上がったほうがはるかに楽です。

作文も同様、小さな段階に分けると、君の予想以上に簡単に作業が進むでしょう。
「えっ、こんなに楽だったんだ」と君は気づくはずです。

もう一つ、君は物語全体の内容を把握するのが苦手です。
音読はできるし、単語や一文の意味もわかるのですが、いくつもの文がつながって物語を形成しているときに内容がわからなくなっています。
夏休みの宿題である読書感想文を私が教えているときに、こうした君の傾向に気づきました。
算数の文章題が苦手な理由も、ここにあると思います。

私が君に作文を教えるときには、物語を絵や図にしながら把握する方法を一つの候補にします。
君はテスト用紙などに書き込みするのをひどく嫌がります。
しかし、思考をメモとして残しておかなければ忘れてしまうのが一般的な人間です。
「書き込まない」というこだわりを少しずつ消していくのも、課題の一つかもしれません。

世の中のほとんどの出来事が、一文ではなく物語で構成されています。
今、テレビをにぎわしている森友学園問題もまさにそう。
自分が遭遇する出来事を物語として内容を自分なりに把握しながら、自分の考えを的確に周囲に伝える。
私が教える作文は、この一連の作業です。
「感性豊かに」「ドキドキとワクワク」「あふれるような情感」とは無縁で、作家や小説家、ライターを目指す高度なものではありません。
だから安心してください。
ちょっと悪い言い方をすれば、「悪人にだまされて損をすることを防ぐための作文」です。
作文を教わっておくと、得しますよ。

君は本を読むのは得意で絵を描くのも好きだから、物語全体の内容を把握する作業から始めましょう。

最後に、私自身の反省は、パソコンの前でうなりながら原稿を書く姿を君に見せていることです。
作文はつらく厳しい作業だと君は思い込んでしまったでしょう。
原稿を書く作業は確かに苦しいのですが、完成したときはこのうえなく気持ちがいいのです。
これからは原稿を書いた後の達成感をサンシャイン池崎のように表現したいと思います。

イエェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ~


昨日、伝え忘れたこと

大事なことを伝えていませんでした。
それは、勉強を含めた普段の生活でがっかりしたり、つらくなったりしているのは君だけではないということ。

学校での成績がいい優等生でも、君とは違う形でつらい思いをしているかもしれません。

君は「お母さんは頭がよかったから」とよく口にします。
確かに、お母さんは子どもの頃は成績がよかったです。
そして学生時代には、もっと成績のよい女の子たちが周囲にいました。
私も周囲の女の子たちも「いい子」に見えていたでしょう。
しかし、摂食障害、母・娘の葛藤などの問題を抱えていた人は少なくありませんでした。

摂食障害とは、食事をほんのわずかしか取らなくなってガリガリにやせたり、一気に大量に食べて吐いてしまったりする、一種の病気です。
食べることが好きな君には、理解しにくいでしょうね。
母・娘の葛藤については、親子なのに一緒にいたくない、縁を切りたいということになるでしょうか、かなり大ざっぱな説明ですが。

本当のところは、周りの人はもちろん、自分自身でもよくわからないことが多いのです。

これから「自分だけが大変だ」「つらい」と感じたときには、「そんなふうに、周りのみんなも感じているかもしれない」とちょっとだけ思ってみてください。

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