受験・テストに強い「効率脳」と思考を弾ませる「跳躍脳」では「頭の良さ」「活躍のしかた」にも違いがある

「効率脳」と「跳躍脳」は
一人の人間の中に同居する
 私が通っていた公立中学校は、学力だけでなくガラが悪いことでも有名でした。
 運動場にパラパラと音を鳴らしながら暴走族が来る。校内にたばこの吸い殻が大量に落ちてくる。シンナーを吸った男子生徒がよだれを垂らしている。壁が破壊されてボコボコと穴が開いている。
 当然、授業になりません。そんな中学校から偏差値70の公立高校に進学できたのは、私の脳タイプが「効率脳」だったからと思っています。小器用で、暗記が早く、問題を見ると出題者の意図がすぐにわかるので、受験にぴったり。
 受験だけでなくクイズにも強いのが「効率脳」の持ち主で、与えられた問題を素早く答えるのが得意です。
 「効率脳」の欠点は、自分で問題を作る想像力が乏しいこと。過去問を分析して別の問題を作ることはできるものの、まったく違う発想で完全に新たな視点から問題を作ることは苦手です。

 息子は私と違って「跳躍脳」。
 ポンポンと思考を弾ませる「跳躍脳」は、出題者の意図はおかまいなしに、問題文で自分が興味を持ったところに集中しがちです。制限時間も気にしないため、学校のテストではなかなか点数が取れません。
 息子の行動で印象的だったのは、レゴブロックを使った遊び方。装甲車としてパッケージされたレゴブロックで、息子は説明書をまったく読まずになぜかコマを作ってしまったのです。オリジナルのコマをたくさん作って、喧嘩ゴマをして遊んでいます。

 私の仮説では、「効率脳」と「跳躍脳」は一人の人間の中で同居しているのですが、どちらかが優位になります。
 受験では、「効率脳」優位の子どもは、たとえ周囲の環境が勉強に望ましくなくても、小器用にテストで高得点を上げられます。
 一方「跳躍脳」優位の子どもは、勉強において競争が激しい環境でもマイペースなのでテストで点が得られません。そのため周囲から「頭が悪い」と勘違いされがちです。

頭が悪いのではない!
脳のタイプが違うだけ
 「跳躍脳」優位の子どもはたくさんいると思います。そうした子どもたちが「自分はバカだ」と思い込んでいるとしたら、私は大声で伝えたいです。「バカじゃないよ、脳のタイプが違うんだよ」と。

 そして私が主に取材してきた医療・美容関係の分野では、「効率脳」と「跳躍脳」の両方が活躍していました。
 医師、大学教授、研究者、看護師、鍼灸師、柔道整復師、整体師、スポーツトレーナー、リフレクソロジスト、アロマセラピスト、気功師、マッサージ師、ヨガ行者、カウンセラー、シューマイスター、美容研究家……。まだまだ職種はあります。
 この分野に限らず、すべての分野でいろいろな職種の「効率脳」と「跳躍脳」が協力することでサービスが発展してきたのではないでしょうか。

 「跳躍脳」を社会で生かすためには、他人の考えを理解したり、自分の考えを適切に周囲の人に伝えたりする技術を身に着けたほうがいいと私は考えました。話を聞かない・考えを言わないでは、単なる「困った人」になります。
 他人の考えを理解したり、自分の考えを適切に周囲の人に伝えたりする技術は、読書感想文を書くことで訓練できます。小学3年生以降に読書感想文の宿題が出るのは、子どもたちを社会に送り出すうえで理にかなっていると私はとらえています。

 「跳躍脳」が本を読むときには、自分の都合のいいように文章を誤読する「勝手読み」が多いと推測できます。「きちんと文章を読みなさい」「じっくりと読書しましょう」と伝えても、本人は「きちんと」「じっくり」読んでいるつもりなので意味がありません。
 こうした「勝手読み」は、自分で読書感想文を書くという作業によって改善されると私は期待しています。
 私の経験では、本当に理解したことでなければ、自分の考えや感想をわかりやすく文章化できません。他人にとってわかりやすい文章を書く作業には、必然的に「きちんと」「じっくり」という態度が伴うのです。
 文章をわかりやすくするルールを挙げましょう。
○1文をできるだけ短くする。
○否定文はできるだけ肯定文にする。二重否定は使わない。「~のような」と比喩を用いた否定は避ける。
○主語と述語を対応させる。
 こうしたルールを意識して、「わかったつもりで文章を書くことはできないな。もっときちんと本を読まなくては」と子どもたちが自分で気づいてもらえたらと思っています。

社会で活躍するには
さまざまなルートがある
 先に医療・美容関係のいろいろな職種を紹介しました。皆さんの学歴・経歴もさまざまで、一緒に仕事をしながら私は驚いていました。学生時代の私には、大学を卒業して就職するというルートしか見えていなかったからです。
 私が社会に出て学んだのは、さまざまなルートを通ってきた人が自分の能力を使って活躍しているということ。そして、点数を取ることが目的ではない勉強がたくさんあるということでした。

 人工知能が発達するこれからの社会では、人間の働き方もどんどん変わるでしょう。私は親として、過去の成功体験や視野の狭さを克服して、子どもたちを社会に送るさまざまなルートを見つけていきたいと考えています。
実は脳のことは、現在の科学でもまだよくわかっていません