地域に根を下ろし、身の丈に合った役割を果たすという働き方


昨日、貸店舗の内見で訪れた不動産屋さんは全員が女性スタッフ。
しかも私(アラフィフ)の叔母ぐらいの年齢と思われる人がチャキチャキと仕切っていたので、びっくりしました。
これまで私が行った不動産屋さんでは必ず1人は背広姿の男性がいたし、仕事のメインは男性で女性のほとんどが事務員だったからです。

貸店舗を案内してくれた女性が、「この道はね、私の子どもの頃は牛が歩いていたの」などと話してくれて、町にも人にも歴史があるんだなとしみじみ思いました。

数カ所の貸店舗を見て回って不動産屋さんに戻ると、「どんなお店を開こうと思っているの?」と別のスタッフに聞かれました。
「本屋をやりたいと思って……」と私が言ったところで、スタッフ全員が「う~ん」という表情に。
続けて「そして、編集者だった経験を生かして作文を教える教室を開きたいと思っているんですよ。今はフリーライターなんですけど」と話したら、今度はスタッフの顔がぱっと明るくなり「それだったら事務所兼用でいいわね。本屋は厳しいわよ」と言ってくれました。

スタッフの表情と言葉で、本屋の経営は難しいと改めて感じました。
過去に、本の販売で得られる利益をしつこく計算し、「小規模だったらどんなにがんばっても家賃さえ払えない」という結果は出ていたからです。
それでも本にかかわる仕事がしたいのですから、もう仕方がありません。
スタッフと話しながら、本というモノを売る以外に私が提供できる技術や情報といったサービスについて、さらに検討することにしました。

もう一つ、今回訪れた不動産屋さんで感じたのは、生涯現役ってかっこいいなあということ。
スタッフが部屋や店舗を仲介するだけでなく、どんな町にしたいかという考えも持って仕事をしている印象でした。
長い年月を、地域で役割を果たしながら働き続けるというところで、そのかっこよさが生まれているのかもしれません。

地域に根を下ろし、定年など気にせず、体と頭が健康な限り働き続ける。
そんな働き方を私もしたいとあこがれた次第です。

利益を出せるかどうかを計算していると、店を持つという気持ちがなえてしまいます。
「まだ子どもにお金がかかるのだし、別に今の時点で店を持たなくてもいいじゃないか。いつか機会があればやったらいいんだし……」と、悶々と悩んでいました。

どうなるかわからない事業に手を出すよりも、現在持っているお金を守ろうとする人間の心理や行動を「損失回避」と呼ぶそうです。
『貨幣の「新」世界史』(著/カビール セガール 早川書房)を読んで、お金にまつわる悩みも葛藤も学問的にすでに考察されていることを知り、「私の心理状態こそ損失回避!」と気づきました。
やっぱり本はおもしろい!
損失回避を克服して、本のおもしろさ・本から得られる発見を地域の皆さんに直接お伝えする仕事を作っていきたいと思います。