印刷された紙切れがお金になるのは「思い込み」が宿るから? トレカでお金を考えてみた

100ドルだったジュースが1カ月後には
231億ドル出さないと買えない?
私がジンバブエに行ったのは2002年の夏。
飛行機トラブルや肋骨損傷など、旅行中のひどい体験を日記に書いていました。

「なんだか、ジンバブエにはむかついている。
市中の土産物屋は、高い。
かなりふっかけてくる。
ガイドは高い店にしか連れて行かない。
まあ、観光客にお金を落としてもらいたいんだろうけど。

ガイドはボツワナで食用油を入手して、ジンバブエに持ち帰っていた。
30歳の女が、自分のお金で、1人でチョベのサファリロッジに泊まれるなんて、この国では考えられないことなんだろう。
ホテルにも税関にも、大統領のポートレートが飾ってあった。
日本とは違う国、ということ。

私は日本では庶民だけど、アフリカだと違う。」

日本から離れたことで、私はお金について深く考えたようです。

当時、ジンバブエの紙幣だったジンバブエドルは、隣国のボツワナにあるチョベ地区のサファリロッジのフロントで両替してもらえませんでした。
拒否をする手の動きで、頭を左右に振る女性の「これはダメダメ」という表情を覚えています。
ジンバブエドルは2002年の時点ですでに信用されていませんでした。
その後、ロバート・ムガベ大統領が独裁政治を行うジンバブエの経済は混乱していき、2008年7月のインフレ率は2億3100万%だったと報じられているそうです。
6月まで100ドルで買えていたジュースが、7月になったら231億ドル出さないと買えなくなったということでしょうか。

『「お金」って、何だろう? 僕らはいつまで「円」を使い続けるのか?』(山形 浩生、岡田斗司夫 FREEex 光文社)によると、ジンバブエドルを刷る費用のほうが、紙幣の額面よりもはるかに高かったとのこと。
日本に置き換えると、1万円札を印刷するのにインク代が2万円かかっちゃうという話です。
なお、1万円札の実際の印刷費は1枚当たり約22円だそうです。

誰が紙に印刷したかが
価値を左右する
紙幣について考えていると、息子が遊んでいるトレーディングカード(トレカ)を私は思い出します。
トレーディングカードとは、トランプぐらいの大きさの紙に絵が描かれたカード。


インターネットで検索すると、トレーディングカードの両面印刷で200枚13050円。紙代と印刷代で1枚当たり65.25円。
市中に出回っているものはさらに大量に印刷しているはずなので、1枚当たり30円程度でしょう。
原価がその程度の印刷紙が、うちの近所のお店では1枚当たり税別980円などで売られているのです。それを買う息子も息子です。

トレーディングカードに執着する息子の様子を、また息子が友人と「このカード3枚と、あのカード1枚を交換ね」などと交渉している様子を、私は奇異の目で見ていました。
しかし、紙幣もトレーディングカードと同様、絵が印刷された紙切れ。
別の物と交換する手段という共通点もあります。

トレーディングカードも紙幣も、多くの持ち主が「これは大事だ」「価値がある」「みんな欲しがっている」と思い込んでいるから、いろいろな物と交換するのでしょうね。
トレーディングカードは別のトレーディングカードやおもちゃなどと交換。
紙幣は世の中の商品、ほかの国の紙幣などと交換。
お手伝いしたら小遣いがもらえる家庭では、お手伝いの労力・時間が紙幣や硬貨と交換されてから、トレーディングカードに交換されている場合もあるでしょう。

さらに、トレーディングカードも紙幣も、誰が作ったのかが価値を決めるポイント。
私だって、トレーディングカードぐらい作れます。
しかし、私が作ったところで息子もその友人たちも欲しがりません。
有名玩具メーカーのカードだから、彼らには価値があるのです。

トレーディングカードの人気が衰えてくると、息子は見向きもしなくなるでしょう。
「どうでもいい」「ばかばかしい」と息子や周囲の友達の熱が冷めた時点で、がんばって入手してきた大量のカードはただの紙。
ということは、日本円の紙幣もただの紙に戻る可能性があるのです。

お金は紙や金属という物ではなく、紙や金属に宿った思い込み、あるいは幻なのかもしれません。
思い込みが消えれば、お金も消えていくのでしょう。
今はお金ではなくなった、このジンバブエドルのように。

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