アトピー性皮膚炎は本人だけでなく周囲の人も含めた心の問題

「注意すべきなのは、責任を母親に押し付けてはいけないということです。母親は子どもをとても愛しているのですから」
アトピー性皮膚炎の子どもを持つ母親について、ドイツの大学教授がこのように語っていたそうです。
ドイツではアトピー性皮膚炎が患者さん本人だけでなく、その周囲の人も含めた心の問題と深くかかわっていると認識されているようです。

「かくのはやめなさい」は
逆効果かもしれない
赤ちゃんや子どもの湿疹を見たり、ボリボリとかく音を聞いたりすると、親は不安やいらだちを覚えませんか?

私がそうでした。
娘が1歳になるまでは、顔は真っ赤。
耳の下の皮膚はパックリ切れていました。
ひどい湿疹はステロイドを使わずに治まりましたが、その後も皮膚が乾燥しやすく、ひじやひざの裏をかいていました。
そのボリボリという音が私の気に障って、娘に「やめなさい」と大声を出すこともしばしば。
患部に保湿剤を塗っても、かく行為は続きました。

今、思うのは、子どもの皮膚の状態に親がイライラして注意したり、保湿剤を塗ったりするのは逆効果かもしれないということ。

『アトピー治療最前線』(NHK取材班 編、岩波書店)では、ドイツの病院で行われているアトピー性皮膚炎の治療法が紹介されていました。
アトピー性皮膚炎が患者さん本人だけでなく、その周囲の人も含めた心の問題と深くかかわっていると、ドイツでは認識されているようです。
赤ちゃんがアトピー性皮膚炎の場合は、母親の精神的な状態も考慮されているということです。
アトピー性皮膚炎の赤ちゃんを持つ母親には30分以上にわたってカウンセリングが行われ、カウンセラーが語りかけるというよりも丁寧に母親の話を聞いていたのだそうです。

「皮膚は心の鏡」と言われています。
親がイライラしたり悩んだりしている様子や「やめなさい」という言葉が、子どもにストレスを与えて皮膚の症状を引き起こしている可能性があるわけです。

この本に掲載されていたドイツの大学教授の言葉を抜粋します。
「重いアトピー性皮膚炎の子どもの母親は、しばしば義務感が強すぎ、几帳面すぎて、子どもの世話もかなり厳しいということがわかりました。
 ここで注意すべきなのは、責任を母親に押し付けてはいけないということです。母親は子どもをとても愛しているのですから。ただ、あまりにもすべてをきちんとやろうとするのは問題です。」

皮膚をかきむしる子どものアトピー性皮膚炎のケアで夜も眠れず、苦しみ、不安を抱いて、ストイックにダニ退治や食事制限を行っている親たちに、医師をはじめ周囲の人間がさらなる責任を押し付けてはいけない。修正すべきなのは、そのストイックさだと教授は語っています。

「かいてはダメ」よりも
「あなたが大事」が効果的だった
話が大きく変わりますが、私はずいぶん前に「子どもが性器を触る癖があるときは、どのように対処したらいいのか」というテーマで、精神科の明橋大二医師に取材したことがありました。
明橋医師は「汚い! 触ったらダメ!」と注意するのではなく、「大事なところだから、きちんと手を洗ってから触ろうね」と親が語り掛けてくださいとのこと。

性器も子どもの体の一つ。その部分に向かって「汚い」という言葉を親が発することで、子どもは自分の体が汚いと否定されているような気持ちになるようです。
また、性に関することでも「汚い」「ダメ」という表現によって、大事にしなくてもいいとメッセージを送ることにつながるかもしれません。

性器を含め自分の体は大事、性は妊娠や出産に関係することだから大事。そんな思いがあると、子どもたちは性を含め自分の体をもっと大切にするようになる……
明橋医師の話はとても印象的でした。
「大事」という言葉が私の頭に残っていたのでしょう、ある夜、寝る前にボリボリかいている娘の手を私は握って、「お肌、大事、大事だから」と口にしました。
すると、かく手が止まり、私が手を握っている間に娘はそのまま寝てしまいました。
夜中も娘は体をかき始めます。
そこでも「大事、大事」と言いながら私が手を握ると、かく手が止まったのです。

不思議なことに、娘に対して「大事、大事」と言うと、私自身も気持ちが落ち着くのでした。

子どもや自分にかける
言葉を換えよう
アトピー性皮膚炎を含めた皮膚症状のキーワードは「汚い」。
例えば、皮膚にホコリや泥が付いていたら「肌が汚い」。
そして、皮膚が乾燥してうろこ状にめくれたり、膿でグジュグジュしていたりしても「肌が汚い」。
汚れが付着しているときも、症状が現れているときも「汚い」と表現することが多いのではないでしょうか。
そのために、「ホコリや泥は洗えば落ちるから、皮膚の症状も洗えば落ちる」といった誤った観念が生まれる可能性もあるでしょう。

皮膚症状は汚いのではなく、バリア機能が落ちた状態です。

もう一つのキーワードは「親のせい」。
皮膚科医の中には、「3歳くらいまでに皮膚の症状を治しておかないと、大人になってもトラブルが続く」などと言う人がいました。
「このままでは一生治らないからね」「親のせいだよ」などと脅すニュアンスが込められています。
私はこの件について調べましたが、あるアメリカの医師が言ったという程度で、信頼できるデータは見つかりませんでした。
そもそも調査していないようです。まったく根拠はありませんでした。

また、アトピー性皮膚炎には、ある特定の遺伝子が関係していると考えられています。
しかし、「再投稿 ふろに入らないほうが美肌になる!」で書いたとおり、多くの要因が積み重なることで発症するわけです。
遺伝する素因もあるかもしれませんが、それがすべてではありません。
自分がアトピー性皮膚炎も子どもがアトピー性皮膚炎でも「自分のせいで子どもも」とは思わないでください。
ふろに入る頻度など同じような生活習慣を送っているために、親子で発症している可能性もあるはずです。
そうならば、生活習慣を変えればいいのです。

もしも親のせいだとしたら、まじめすぎる・気にしすぎるという点でしょう。

症状の出ている皮膚に対しては「汚い」ではなく「バリア機能が落ちている」。
親がアトピー性皮膚炎の場合は「(子どもへの遺伝もあるかもしれないけど)それがすべてではない」。
患部をかいているときは「どうしてかくの?」「かいたらダメでしょう」「やめなさい」とは言わずに、「冷やそうか」と言いながら保冷剤を渡したり、リラックスボールをわたして「にぎにぎしよう」と伝えたりする。
「かわいそう」と悲しむより、自分と子どものいいところをどんどん口にしたいですね。

私にとっての「美肌」をつるつるの赤ちゃん肌ではなく、バリア機能が発揮されて、かゆみなどにほとんど悩まされない健康な皮膚です。
その意味での美肌には、私も娘も、そして誰もがなれると思っています。

※以下は、私が製作した単行本の見開きです。医師は監修しておらず、「美肌とはなにか?」「清潔とはなにか?」をテーマに編集者として情報をまとめました。
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